間違いが許せない子達

GIFTの生徒の中には、自分の想定外の状況がやってくると、パニックになってしまう生徒が何人かいます。 

例えばある生徒は、自分が書けると思っていた漢字が思い出せないと、イライラしながらずっと思い出せるまで悩んでしまい、「いったん答えを見て覚えよう」や「他のできる漢字からやる」や、「中断する」などの、他の方法への方向転換ができなくなってしまいます。

ちなみに、この生徒には毎回、数日前に何の漢字の学習をするかを伝えています。

そして、ご家庭の協力のもと、家で事前に予習して頂くようにし、当日、初めて本人がその漢字と出会うような状況にならないようにしています。しかし、それでも、できないとパニックになってしまいます。

SSTカードによるトレーニング

そこで、その子に行って効果のあった、SSTカードを使用したアンガーマネジメントのトレーニング事例をご紹介します。

STEP1 カードの問題の説明と、子どもによる選択

まず冒頭の絵カードを見せ、次のような説明をします。

「この女の子は誕生日に、大好きなキャラクターのぬいぐるみをお父さんに買ってもらう約束をしていました。」

「そしてお店に買いにいくと、何と、大好きなキャラクターのぬいぐるみは売り切れでした。この子はどう思ったでしょうか」そして、次の選択肢を提示します。

  • 約束したのに買うことができないお父さんはウソツキだ。お父さんが悪い。日本中のお店を探してでも手に入れるべきだ。
  • 他のものを買う
  • お店やネットで注文し、別の日に買う

すると、その子は、1番を聞いて笑った後、2と3を選択しました。

自分の事例ではなく、他人の事例を考えるときは冷静にとらえやすいので、ハードルが低くなります。

STEP2 テーマの内容に対する解説と深化

同じようなテーマのカードをもう一つやったあと、次のような解説をしました。

「このように自分が予想していたり、望んでいたことと違ってしまうことは、よくあるよね。」

「でも別の日に買うなど、別の方法が選べると、解決できるよね。こんなふうに、予定通りにいかなかった時には、別の方法をとることが大切なんだ」と説明しました。

そして、その後、「では、もし君が、今日やる漢字で、分からなかったり、間違えて、どうしても思い出せなかったらどうしたらよいと思う?」と聞きました。

少し、ヒントを出すと「答えを見て、別の日にやる」と答えることができました。

その後の効果

そして、実際に漢字の学習活動に入ってみると、実はいつもより、書けなかった漢字が多かったのですが、できなかった漢字を後回しにしたり、ヒントをもらうことができたり、必要以上に悩まずに、イライラせずに切り替えることができました。

いつもはヒントをもらうのを負けと感じるのか拒否します。

面白かったのは、漢字以外でも、間違えたり、上手くいかない場面があったのですが、パニックにならずに受け流すことができたことです。

このように、今回の、「予定位通りに行かなかった場合を先に予想しておく」SSTで、パニックを抑える効果があったと考えられます。

そして、日常的にも、ご家庭で、何かをする時に、事前にうまくいかなかった時の予想をお子さんといっしょに行っておくことで、パニックを回避できる可能性が上がります。

ただし、このスキルを定着させていくには、このようなSSTを繰り返し、継続して行う必要があります。

GIFTでは、このようなGIFTオリジナルSSTカードを200ケース以上用意し、場面対応の、SSTを行っています

その他の注意事項

発達障がいのお子さんは、上記のような路線変更できるかどうかの、もう一つの要因に、どうしても本人のその日のコンディションを強く受けます。特に寝不足は要注意です。

本人のメンタルの許容量を下げてしまいます。基本的な生活リズムは極力整えて頂き、特に寝る直前のゲームはやめた方が良いと思います。

(アドレナリンが出て、寝つきが悪くなるだけでなく、睡眠の質も下げる)。

また、人間関係のトラブルなどで、極端にメンタルが落ちている時には、SST自体を実施しない方が良いと感じています。

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投稿者プロフィール

内田 雄二
内田 雄二
発達障がいの子どもを天才に輝かす専門家。
上郷個別教室GIFT代表。

今まで直接教えてきた生徒は2000名以上。認知能力トレーニングと支援教材という、独自の手法で、発達が気になる子ども達の能力開発を行っている。

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